INTERVIEW

担当楽器にも、それぞれの性格が出ている

――2015年に「響け!ユーフォニアム」がスタートした当時のことは覚えていらっしゃいますか?

すごく覚えています。最初に資料をいただいたときに「吹奏楽がテーマ」と書いてあるのを見て、小学校6年間ずっと吹奏楽をやっていた私はご縁を感じてしまって。また、以前に「境界の彼方」という作品で京都アニメーションさんにお世話になっていたこともあって、勝手に縁が深いなと思っていましたね。でも実は、オーディションでは久美子と葉月を受けたんですよ。そのときはキャラクターデザインも今と違って、緑輝も髪が長かったし、葉月ちゃんはツインテールだったし、久美子とかはハートのピンがついていたりして。「2人まで選んでいいです」と言われていたので葉月ちゃんと久美子を選んだんですけど、その後に音響監督の鶴岡(陽太)さんから緑輝を勧められて、その場で台本をいただいて。だから、自分が「これかな?」と思ったキャラクターと、人から見て「これだな」と思うキャラクターって違うんだなという、そんな思い出がありますね。

――ご自身では緑輝役に決まって、納得するところはありましたか?

もともと受けるつもりのないキャラクターだったので、「受かりました」と言われたときに「どれ?」って(笑)。納得というよりは「そうだったんだ」という感じでした。でも、実際アフレコが始まったら、すごく演じやすいキャラクターでしたね。自分と近いとか、性格が似ているというわけではないんですけど、4人の中での立ち位置が私と似ているなと思いました。まとめ役といいますか、かすがいといいますか……(笑)。キャラクター同様、キャストもみんなパンチが効いているので、そのパンチの強い個性を作中でもみどりちゃんがつないでいるというか、まとめている雰囲気とかはキャストとキャラクターで近いなと思っていて、そういう部分ではあまり迷いなく演じられた気がします。

――緑輝は独特の立ち位置というか、不思議な存在感がありますよね。

「ちっちゃいのに、安定感ある」みたいな。それは小さな体でコンバス(コントラバス)を弾いているということと近いのかな? 担当楽器にも、それぞれの性格が出ているなと思います。トランペットは花形で特別になりたい感が強いし、最初の頃の久美子の自我をあまり表に出さない感じはユーフォ感があるし、葉月ちゃんのめげない強さはチューバに出ているし、チューバとコンバスは特に下を支える低音じゃないですか。それがみんなを支えるふたりのキャラクターとリンクしているなと思いながら見ていました。

――シリーズを通して、緑輝の成長や変化を感じることはありましたか?

久美子とか麗奈とかはわかりやすく成長しているんですけど、みどりちゃんは逆に変わっていない。最初から芯があって、出来上がっているので。だからこそ、大事な存在なんだなと思います。みんながみんな、一気に変わっちゃうと、ついていけなくなっちゃうかもしれないじゃないですか。その中で変わらない人がひとりでもいてくれると、安心感を与えてくれるはず。アフレコ現場でも、作中で学年が上がったときに他のキャラクターは「もうちょっと大人になろうよ」みたいなディレクションをされていたのに、みどりちゃんに関しては「そのままでいいんじゃない?」と言われて(笑)。だから、私としてはそんなにTVシリーズとか劇場版で変えたところはないですね。

――これまでのシリーズの中で印象的なセリフやエピソードを挙げるとしたら?

自分がみどりちゃんとしてしゃべったセリフの中で印象に残っているのは、みんなの印象に残っているかどうかわからないんですけど、1期の1話で「アイコピー」と言っているんですよ。「この子は日常生活で『アイコピー』を使う子なのか?」と思ったら、その後いっさい出てこなくて、「あれは何だった?」と(笑)。逆に気になっちゃって、今でも忘れられないセリフになっています。「アイコピー」の意味自体は「I copy.」で「了解した」とか「確信した」とか、ラジャー的な使い方をする言葉なんですよね。最初に久美子や葉月ちゃんと自己紹介をするシーンで、「わたしは葉月ね。よろしく」と言われたのに対して「アイコピー」って返してから「久美子ちゃんは?」みたいな質問をしているから、その会話の流れの中では自然に使っていたんですけど、口ぐせとかではなかった(笑)。

――たしかにアニメキャラの口ぐせとしては、ありそうなフレーズですよね。

セリフとしてはそれが印象的で、エピソードで言うと、安定してきらきら星の回が好きなんですよね。1期の6話だったかな?(第六回「きらきらチューバ」)葉月ちゃんが初心者で、まだ上手に吹けないけど、低音パート3人で「きらきら星」を演奏して初めて合奏の楽しさを知るという。葉月ちゃんが「楽しい!」って、心の底から言ってくれる感じが好きでしたね。本当に低音パートって、ベースのところばかりを吹いているから一向にメロディーが来なくて、最初は楽しさがわからないんですよ。でも、合奏することで自分がどれだけ求められているかを初めて認識できるし、「楽しい!」ってなってくる。そういう吹奏楽あるある……というか、低音あるあるがリアルに描かれているなと思って見ていました。

――ちなみに豊田さんの吹奏楽部時代の担当パートは?

トランペットでした。だからオーディションでも麗奈を受けようかなと一瞬思ったんですけど、麗奈は違うなと思って(笑)。あと、今でこそ「響け!ユーフォニアム」というタイトルは馴染んでいますけど、最初に見たときはびっくりしました。「仮タイトルかな?」と思っちゃうくらい。なぜかというと、ユーフォニアムって本当にマイナーな楽器だったんですよ。もちろん好きな楽器ではあるのですが、決して花形ではなくて。今でこそ、この作品のおかげでユーフォ自体の認知度というか、人気が上がったらしくて、「ユーフォやりたい!」という人も増えたみたいですけど、私の頃は自分からユーフォやりたいと手を挙げることも想像できなくて。

――久美子がユーフォニアムを始めたのも「何となく」ですからね。

なので、ユーフォという楽器自体の運命が変わったなと思います。こんなにみんなに求められるようになるなんて! 作品の力と、影響力に感動しています。

声優人生のほぼ全部を共に過ごしている作品です

――たくさんの登場人物の中で、特に印象に残っているキャラクターは?

みんな印象的なんですけど、みどりちゃんに関わるところで言うと、やっぱり求くんですね。かわいい(笑)。

――男子の後輩ができるというのも面白いですよね。

しかも、求くんもまたちっちゃくて、ちっちゃい子ふたりが大きいコンバスを持っているという、もうその画でかわいい! あと、求くんは自分の名字を嫌っていたりするので、そういうところは自分の名前にコンプレックスがあるみどりちゃんと似ているし、お互い強豪校出身だったりとか、実は共通点があるんだなというので、なるべくしてなった師弟関係なんだなと思いますね。求くんも最初はツンツンしていたのに、最終的にはみどりちゃんの言うことに対して「何でも聞きます!」みたいな感じになっていて、いつの間にか手懐けていたという。その手懐けられているところはいっぱい描かれていたわけではないので、そこはぜひ描いていただきたいなと思うシーンではあります(笑)。

――自分と性格が似ているなと思うキャラクターはいますか?

似ている子、いるかな……? やっぱり、みどりちゃんがいちばん似ているかもしれないです。あそこまで精神的に達観していないですけど。

――では、「こういうふうになりたい」と思うキャラクターはいたりしますか?

麗奈とか、憧れますよ。あんなふうにトランペットが吹けたら気持ちいいだろうなって、本当に思います。あれだけソロパートが吹けたら最高だろうなって、実際に吹いていた側からすると技術的に憧れる面も多いですね。麗奈は思考回路すら特別で、自分にはない考え方だから、そういう部分で憧れるところもあったりして。日常生活であの性格だったら、かなり生きにくいとは思いますけど(笑)。わりと人に敬遠されちゃうタイプの思考回路をしているけど、それは周りの目を気にせず、自分の信念を貫く強さを持っているということでもあるので、そういう意味では「かっこいいなあ!」という感じですね。

――北宇治カルテットとしての活動で印象に残っていることはありますか?

最初の頃は、みんな今より5歳も若かったというのもあり、今だと想像がつかないくらい緊張していたりもして。「この4人でラジオとかやっていけるのか?」って、スタッフさんが心配になったらしいですね。今はもう4人のチームワークもポジションも確立していて、何も心配事はないんですけど……。

――逆に、少しおとなしくしてくださいと言われるくらいですかね?

「緊張しろ」とは言われます(笑)。イベント前とかに、プロデューサーさんとかが手を叩きながら「はい、緊張して、緊張して!」って。そんな4人でいるのが楽しいというか、好きだなあと思います。イベントとかライブとかの活動もいろいろあって、その中でもやっぱり演奏会がいちばん記憶に残っているかもです。楽しかったなあ……!

――実際に北宇治カルテットの皆さんで演奏したこともありました。

私は金管楽器だったらある程度吹けるんですけど、コンバス担当になったので、そういう意味ではゼロからのスタートで大変でしたけど、楽しかったです。私とあやちゅ(朝井彩加さん)で自主練習とかもしていましたね。

――自分自身としても「響け!ユーフォニアム」を通して青春を過ごしていた?

だって、5年ですからね。20歳の誕生日はアフレコ現場でお祝いしてもらった思い出があるから、決まったのは19歳のときで。私は18~19歳でこの世界に入って、今25歳なので、声優人生のほぼ全部を共に過ごしている感じですね。そういう作品と、これからも一緒に歩んでいけるというのはうれしいですよね。

――これまでの5年間、そしてこれからも「響け!ユーフォニアム」を応援してくれるファンの方へのメッセージをお願い致します。

1年生から始まって、2年生、3年生まで演じられることって、なかなかないじゃないですか。それはファンの皆さんがいるから続編が決まるわけですし、「待っていてください」と自信をもって言えるのはキャスト側、スタッフ側からしても本当にありがたいことだなと思っています。これからも変わらず、5周年記念ディスクとかも含めてコンスタントに作品を届けられる機会があるので、楽しみにしてもらえたらなと思います。

And the next interview begins...

CAST INTERVIEW RELAY! 03

CAST INTERVIEW RELAY!