INTERVIEW

本当の意味で音楽の作品

――2015年にスタートした「響け!ユーフォニアム」シリーズですが、吹奏楽部をテーマにしたアニメ作品はそれまでなかったかと思います。

言われてみたら、たしかになかったなって思いますね。学生のみんなからの反響も大きくて、それがすごくうれしかったんですけど、演じているうえでは(絵を描くことで)顔を演じるアニメーターさんがいて、声を演じる私たちがいて、演奏を演じる洗足(学園音楽大学)のチームがいて、3セクションでひとりのキャラクターを作っていく感じがありました。だからアフレコしているときの物語の印象と、完成したフィルムの印象が全然違う作品なんですよね。「響け!ユーフォニアム」は。

――音楽がつくことによって印象が変わるということですか?

基本的に作品の山場は演奏シーンになるので、私たちはその山場までの過程や、山場のあとの心情の変化などを声で表現している。どういう言い方がいいのかはよくわからないけど、その声の表現がきっかけで劇的に心情が変化するシーンは少ないという感じでしょうか。

――もう少し詳しくお聞かせください。

キャラクターそれぞれの悩みとか、抑圧された部分が物語には必ずあって、それを超える瞬間というのも存在するものなのですが、超える瞬間の大部分は演奏シーンで。たとえばオーディションのシーンでプーって吹いた音がクリアになるとか、目と目が合うことによって何かが通じ合うとか、心の中で引っかかっていたものがカコンと外れる瞬間はキャラクターが演奏していることが多くて。本当の意味で音楽の作品なんです。

――演奏シーンの前後で気持ちを切り替えるは難しい?

もちろん描かれていないというわけではないので気持ちはつながるんですけど、「言葉じゃないほうが伝わることってあるよね」というのを、私はこの5年間で体感しました。

――アフレコ現場の雰囲気は、どんなふうに感じていましたか?

最初のTVアニメが始まったばかりのときは、私はやる気が満ち溢れすぎていて(笑)。大学1年生だし、ひとり暮らしを始めたばかりだし、とにかく誰にも負けたくない!くらいの感じで全部の仕事をやっていたので、今思うと視野が狭くなってしまっていましたね。私がいっぱいいっぱいで、パンパンになっていたから、みんな「大丈夫かな?」と心配してくださっていて。寿(美菜子)さんとか、早見(沙織)さんとか、茅原(実里)さんとか、上級生の先輩たちはすごく気を遣ってくれていました。逆に同い年チームはいい意味でフラットで(笑)。実際はみんな私よりもお姉さんなんですけど、本当に同級生のような感じで1年目が終わり、イベントとかを経て、2年目が始まる頃くらいかな? だんだん私もほかの現場が増えてきて、ちょっとずつ周りが見えるようになり、徐々に力みすぎずに芝居もできるようになって。そのくらいからかなり打ち解けてフランクになり始めたかなという感じがありますね。最新の劇場版(「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」)では、冗談で、ですけどプロデューサーに「緊張感持って!」とか言われたりするくらい、いい意味でみんなの顔がよく見えるようになって。そこまでの段階を3~4年くらいで上がっていったと思うと、成長したなあって(笑)。

――第1期の頃のアフレコはいっぱいいっぱいだったというお話でしたが、歌やラジオ、イベントなど「北宇治カルテット」としての活動も並行してスタートしました。

それも最初は苦戦していて。私は北宇治カルテットをやるまで、そういったユニット活動を先輩としかやったことがなかったんですね。しかも「響け!ユーフォニアム」が3作目で、過去2作はそれぞれの主役の方が決めてくれた方向性に合わせていくイメージでしたが、今回は「私、主役じゃん!」みたいな(笑)。4人の中で私がいちばん年下だし、バランスがわからなくて。最初の1年こそ苦戦しましたが、自分の中の張り詰めすぎていた部分がほぐれていくことで、だんだんとご褒美の時間に変わっていきました。舞台挨拶とかも最初は「どうしよう? 上手にできない!」みたいな感じだったのが、最近だと大好きなスタッフさんたちと、仲のいい友達たちと、愛してくれているファンの方々と、みんなに会いに行けるのが幸せなことだなって思えるようになってきて。先日のユーフォラジオ復活配信の収録のときには、またレギュラーでやりたいね!なんて話していたり…北宇治カルテットのみんなには本当に出会えてよかったなと思います。

久美子に近づいていった5年間

――とてもひとつには絞りきれないと思いますが、これまでのシリーズで好きなシーンやセリフ、キャラクターなどを挙げていただけますか?

好きなシーンかぁ……。でも、秀一とのシーンは好きですね。

――秀一ですか? 少々意外な感じもします。

麗奈とのシーンって、特に大吉山でのシーンとか、基本的にライトの当たりが下からになっていて、色味もついているんですよ。オレンジとか青とか。だから幻想的な感じがあるんですけど、秀一とのシーンは地続きというか、スペシャルじゃないところに安心感があるかなと思っていて、そういう意味で好きです。あと、麗奈役の安済(知佳)さんも魅力のある人なので、麗奈とのシーンは私が安済さんに魅了されるというのがいつものことなんですけど、秀一とのシーンは変に緊張もしないし、がんばらない(笑)。それはみんなの作ってくれる空気感もそうだし、秀一役の石谷(春貴)さんの現場での立ち位置もそうだし、全部が功を奏した感じはあるかなと思います。

――見ている側としても自然な流れで久美子と秀一のシーンを見られるというか。

だから、男の人で久美子を好きな人が見ても、嫌な感じはしないんじゃないですか。それこそ「麗奈と久美子の二人が好き!」という人が見ても、嫌な気持ちにならないんじゃないかなって。でも、もしかしたら、思春期の女の子が見たら、本当にグッと来るのは秀一のほうかなとも思うし。そこにはそれぞれのピュアさがあって、私は両方大好きです!……キャラクターは誰が好きかな? みんなそれぞれに魅力があるので決められないですね。あえて言うなら久美子のお父さん(笑)。

――黒沢さんご自身は、久美子に似ていると思いますか?

どうなんだろう? あまり考えたことなかったですけど、どちらかと言うと自分は麗奈や奏に近いというか、わりと我が強くて頑固なタイプではあったんですけど、最近は「まあ、ええんちゃう?」の人になったんだなと思って(笑)。だから、1期の頃は麗奈のほうに共感していた気がします。でも、世の中は必ずしも正しいことが正義ではないということを学んだりして、そういう意味では久美子に似ているというよりも寄っていっている感じがありますね。

――人の相談を聞いたりすることもありますか?

でもやっぱり、年齢が下の友達は増えてきたので、いろいろ話を聞くことは増えてきましたかね。そういうときは変に何も言わないほうがいいんじゃないかと思うから、あれこれ言わずに見守るようにはしていますけど。というのも、自分が周りの人たちに見守ってもらってここまでやってこられたから、優しく見守るのが大事なんだなと思っていて。

――今回は「響け!ユーフォニアム」の5年間を振り返るのと同時に、黒沢ともよさんの5年間を振り返るようなインタビューになりましたね。

それこそ1年目とかは、週に3日くらいユーフォ関連のことをしていたんですよね。ユーフォ演奏の練習やって、ラジオやって、ニコ生やって、アフレコやって、歌の練習をして、取材があって……。そのときの失敗とかもたくさんあって、その後ちょっと期間が空いたりして、いろんなところでいろんなことを経験して、戻ってきたときに感じる変化があって。だからなのか、役がちゃんと年を取っていく感じがしていて。

――作中の時間では、まだ2年くらいしか経っていませんが。

でも、高校生の成長って目まぐるしいじゃないですか。だから私たちも、そのときの100%ができるんですよ。そのとき持っている武器を全部並べて作品に挑めるから、自分の持っているもので使えないものがないんですよね。すごく色彩豊かだなと思います。

――ほかに、これまで「響け!ユーフォニアム」に関わってこられたなかで思い出深い出来事がありましたら、お聞かせください。

……そう! 私、これを見つけてきたんですよ。初めて「響け!ユーフォニアム」のイベントをやったときに、作品の中で「チームもなか」が作ったお守りをスタッフさんたちが作って、メッセージを入れて、私たちにくれたんです。「演奏がんばってね」というメッセージをイベントの当日にくれるという、そんなこともありました。懐かしいですね……。

――これまでの5年間、そしてこれからも「響け!ユーフォニアム」を応援してくれるファンの方へのメッセージをお願いします。

5年間ずっと応援してくださっている方もいらっしゃいますし、最近知ったよという方もたくさんいらっしゃるかと思うのですが、初めての方はまずTVシリーズを見ていただけると分かりやすいかと思います。楽器とか、演奏とか、この作品ならではの生き生きとした描写がたくさんありますし、北宇治高校吹奏楽部の2年の中に私の5年がまるっと詰まっているので、そんなところもほんのりと感じながら楽しんでいただけたらなと思います。これからもどうぞよろしくお願いします!

And the next interview begins...

CAST INTERVIEW RELAY! 01

CAST INTERVIEW RELAY!