SPECIAL

5月15日「響け!ユーフォニアム」6回目だよ!宇治でお祭りフェスティバル(振替公演)にて行う予定でした朗読劇のシナリオを、今回特別に公開いたします!
開催予定日が高坂麗奈の誕生日と同日だったこともあり、麗奈の誕生日にフィーチャーした内容になっています。
イベントは残念ながら開催延期となりましたが、本朗読劇のシナリオをどうぞお楽しみください!

●登場人物

  • 黄前 久美子
  • 加藤 葉月
  • 川島 緑輝
  • 高坂 麗奈
  • 塚本 秀一
  • 中川 夏紀
  • 吉川 優子
  • 高校2年生の5月。サンライズフェスティバルを無事に終え、北宇治高校吹奏楽部はコンクールへ向けた練習に励んでいた。そんなある日、私、黄前久美子は放課後の音楽室で大きなため息をついていた……
  • はぁ~。もうすぐ麗奈の誕生日だけど、どうしよっかな~。プレゼント、何がいいんだろう?
  • 久美子ちゃん、どうしたんですか?
  • 眉間のシワがすごいよ。なにか悩みごと?
  • 緑ちゃんに葉月ちゃん。いや~人にもらってうれしいものって何かなぁ。二人はどう? うれしいものってある?
  • プレゼントですか? 緑はですね! チューバくんグッズなら何でも嬉しいです!
  • 何でも?
  • はい! チューバくん等身大ぬいぐるみ、チューバくんカレンダー、チューバくん抱き枕、チューバくんお鍋セット、チューバくん醤油さし……
  • ストップストーップ! 醤油さしまでチューバくんがいいの? てか、そんなのあるの!?
  • チューバくんは日常のすべてに寄り添ってくれるのです! ノーチューバくん、ノーライフ!
  • どういうこと!?
  • み、緑ちゃん、貴重な意見ありがとう。じゃあ、葉月ちゃんは?
  • え、私?
  • おーい久美子、うちのお袋がさぁ……。ってごめん、何か話してたか?
  • 秀一か。見れば分かるでしょ
  • だからごめんって
  • それで葉月ちゃん
  • 俺のことは!? スルー!?
  • 人からもらってうれしいものってなに?
  • え、私? うーん、ヘアピンとか?
  • う……
  • う……
  • どうしたんですか? お二人とも
  • いや~なんでもないよ?
  • 私の場合、ヘアピンは毎日つけてるし、やっぱりいつも使えるものだともらってうれしいんじゃない? 実用的というか
  • なるほど、実用的か……。一応、秀一にも聞くけどさ
  • 一応ってなんだよ
  • 人からもらってうれしいものってある?
  • 俺は……特に……その……好きなやつからもらえたら……その
  • は? なんて?
  • ……特にない!
  • あっそ

  • 趣味に振り切っている緑ちゃん、実用性重視の葉月ちゃん、ハッキリしない秀一……。いろんな意見を集めようと、私は音楽室にいる他の先輩たちにも聞いてみることにした
  • あの~優子先輩、夏紀先輩
  • あ、黄前、お疲れさま
  • どうしたの? 改まって
  • 先輩に伺いたいことがありまして
  • え、なになに、恋の相談?
  • 違います! 前にあすか先輩からも同じこと言われましたよ
  • ユーフォパートの伝統ってことじゃん
  • そんな伝統いりません
  • そもそも、私はともかく、アンタに恋愛相談するわけないじゃない
  • それは聞いてみないと分からないって。ね、黄前ちゃん
  • あはは……。それで本題なんですけど
  • あー! はぐらかした!
  • ちょっとは先輩の話を拾いなさいよ
  • いや、いつものことなのでもういいかなって。……あ
  • ……黄前ちゃん、正直すぎ
  • と、と、とにかく! 先輩方は人からもらってうれしいものってありますか?
  • うーん、クマのぬいぐるみ?
  • そういえば、先輩、クマが好きですもんね
  • そう! いつか本場ヨーロッパのテディベアをゲットしたいんだ~。長く大事にできるものっていいよね
  • それで、優子先輩は?
  • そんなの決まってるじゃない! 私が欲しいものは、香織先輩が欲しいものよ
  • ……はい?
  • だから、香織先輩の欲しいものが、私の欲しいもの、ってこと。モノが大事なんじゃない、気持ちが大事なのよ! 私の人生は香織先輩で成り立ってるの。ノー香織先輩、ノーライフ!
  • ……はぁ。どこかで聞いたような
  • 黄前ちゃん、もうこいつのことは放っておこう
  • はい、そうですね
  • スルー禁止!
  • みんなから意見を聞いたものの、ピンとこなかった私は、学校からの帰り道、麗奈本人にそれとなく尋ねてみることにした
  • あ、あのさ。麗奈
  • なに?
  • も、もら……もら
  • もら? モラトリアム? モラハラ?
  • え、いや
  • あ、ハンドゲームのモラ?
  • はい?
  • 古代ローマ時代とかからあるゲーム。結構おもしろいよ
  • いや、そうじゃなくて、プレ……プレ……
  • ぷれ? プレミアム? プレッシャー?
  • いや、プレッシャーは感じてるんだけど
  • あ、もしかして
  • うぐ
  • もうすぐ中間テストだから勉強教えてほしいんでしょ
  • ……え?
  • 久美子の様子がおかしいときって、何か隠し事があるから。きっとテスト勉強してないのかなって。……違うの?
  • 違わない! 全然違わないよ! アハハーさすが麗奈
  • じゃあ、テスト前の休みに勉強会しよ
  • そ、そうだね~
  • じゃあ、また明日
  • また明日~
  • なぜか勉強会の約束を取り付けて帰宅した私は、部屋で自分の不甲斐なさを嘆いていた
  • うわ~。麗奈に聞けなかったよ~。麗奈ってどんなプレゼントだとうれしいんだろう? 優子先輩は気持ちが大事って言ってたけど……。でもあげるなら、喜んでくれるものがいいよね。
  • 去年のプレゼントを参考にしようにもさぁ、『黄前さんらしいね』って謎スマイルを浮かべられてたくらいで、まだ親しくなかったし……。プレゼントなんてあげられるわけもなく……。
  • あ、そういえば、あの時の麗奈、車のヘッドライトに照らされてキラキラしてたなぁ。大吉山からの夜景も、花火大会も、中学3年生のコンクールでの涙も……キラキラしてたように思うし……。キラキラ、なんかいいかも! 麗奈っぽくキラキラしてて、日常使い出来るけど、特別感があって、長く使ってもらえそうなもの……! あ、そうだ。あれはどうかな?
  • みんなからのアドバイスもあり、麗奈にピッタリなプレゼントを思いついた私は、その週末、雑貨店へ足を運んだ。そして迎えた誕生日当日。いつも通り、私と麗奈は朝練に来ていた
  • ねぇ、麗奈
  • なに? 忘れ物でもした?
  • はい、これ。お誕生日おめでとう
  • え……
  • プレゼント、誕生日の
  • う、うん
  • もしかして誕生日間違えた!?
  • そうじゃくて、まさか久美子からもらえると思ってなかったから
  • なにそれ
  • だって、今までもらったことないし
  • そう、だから私から麗奈への初めてのプレゼント
  • ありがとう、うれしい。開けてもいい?
  • だめー。家に帰ってからにして、なんか恥ずかしいから
  • じゃあ、中身が何かだけでも教えて
  • 秘密~
  • なんで秘密なの(笑)
  • おはようございまーす!
  • おはよう
  • あ、おはよう、緑ちゃん、葉月ちゃん
  • おはよう
  • 麗奈ちゃん、お誕生日おめでとうございます
  • おめでとー!
  • え。誕生日知ってくれてたの
  • もちろん! ね、緑
  • はい! 頑張り屋さんの麗奈ちゃんには、緑からトランペットくんのキーホルダーをプレゼントします! 燕尾服姿の激レアグッズなんですよ!
  • ありがとう。うれしい
  • 私からはリップクリームね! 保湿もばっちりだから、演奏した後のケアにと思って。良かったら使ってみて
  • 加藤さん、ありがとう
  • 今日はいつも以上に元気モリモリがんばっていきましょう!
  • お、いいね~緑
  • おはよ~
  • おは~。みんな練習熱心だね~
  • 優子先輩、夏紀先輩
  • おはようございます
  • あ、高坂。今日誕生日でしょ
  • え、あ、はい
  • じゃあこれあげる。香織先輩御用達のハンドクリーム
  • ありがとうございます
  • そのハンドクリーム、とーってもいい香りがするのよ、香織先輩だけに!
  • おやじギャグさっむ~~。しかもそれ、あんたとお揃いってことでしょ
  • もちろん! 光栄に思いなさいよね!
  • 香織先輩はともかく、あんたとお揃いとか、どう光栄に思うのよ
  • なんですってー!
  • おはようございまーす。って、先輩たちはなんで朝から取っ組みあってるんですか
  • あ、秀一。おはよう
  • お、おう。おはよ
  • だーかーらー。このハンドクリームを塗ることによって、香織先輩を近くに感じられるの!
  • 勘違いだって、目を覚まして
  • 1時間前には目覚めてるわよ!
  • あぁ二人とも~
  • 朝から元気なのはいいことです!
  • 元気というか、騒がしいというか、だな
  • だよね~。……って、麗奈どうしたの? ニヤニヤして
  • に、ニヤニヤなんてしてない! そういう久美子だってニヤニヤしてるでしょ
  • え~。まぁ、うれしそうな麗奈さんを見ていたら、つい?
  • ……なにそれ
  • そう言って、麗奈はぷいと顔を背けた。差し込む朝の光に照らされた横顔はどこか照れくさそうだった。その手にある、私からのプレゼントが何なのかは、私と麗奈だけの秘密……。
    こうして、大切な友人の誕生日、そして北宇治高校吹奏楽部の一日が始まるのです!

HAPPY BIRTHDAY REINA!

HAPPY BIRTHDAY REINA!