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director interview小川太一監督インタビュー <前編>

「1本の映画」をつくるという意識が必要なんじゃないかと思い、そこを大事にしました。

interview01

ーー小川さんは今作が初監督作品ですが、ご自身が監督を務められることになったときのお気持ちをお聞かせください。

『響け!ユーフォニアム』に各話演出として参加していたとき、演出について僕なりに手ごたえを感じていました。なので、監督のお話をいただいたときは、それをしっかりと受け止めてくださって、お話をいただけたのかな、と純粋に嬉しかったです。ただ、同時に初めて監督を務めるということもあって、もちろんプレッシャーも感じました。今も感じています(笑)。とにかく、精一杯やらせていただきたい!頑張ります!という気持ちです。

ーー『響け!ユーフォニアム2』を『届けたいメロディ』としてまとめていくとき、どのような部分を意識されたのでしょうか。

この劇場版の制作は「総集編」というカテゴライズで始まりました。ですが、良いシーンを詰め込んだだけのダイジェストムービーにはしたくありませんでした。「普通の総集編」ではやる意義がない、この映画を作る意義を自分なりに見つけないと意味がないと思っていて。予備知識が無くても見られる映画作品として挑まないと、ダイジェストになってしまいかねません。
それだと自分が作る意味、監督性というものも出せないし、観てくださる方の心にも何も響かない。そう考えたときに「1本の映画」をつくるという意識が必要なんじゃないかと思い、そこを大事にしました。

ーー「1本の映画」として構築してくときに、軸、主題となるものはどのようなものでしょうか。

スタート時点では、石原さん、山田さんが作品に対して持たれている想いや、情報量と比べると僕が持っているものは弱くて。それが一番不安でしたが、お二人とお話ししていくうちに、自分なりに方向性を見つけて行くことができました。
実はTVシリーズの演出として参加していたときは、担当の話数の関係で久美子について深くは関わっていなかったんです。一期だと「かけだすモナカ」、二期だと「めざめるオーボエ」のコンテを担当させていただいたんですけど、それぞれメインになるのが葉月だったり、みぞれと希美だったりして、久美子を掘り下げる話数ではありませんでした。そこから監督を務めさせていただくときに、改めて作品と向き合うと、自分の読み込みや理解が全然追い付けていないということが分かりました。自分のできる限りでそれなりに考えてはいたけれど、やはり深いところまでは知らなかったんだな、と。
でもその状態で、外側から見て感じたこともまた「真実」で、それが僕にとっては一番大事な情報だということも分かりました。最初に客観的に見ていたからこそ、守れるものがある。ある意味では、どれだけフラットに見ることが出来るかが求められているのだと。その感覚は大事にしたいなと思いました。作り手として、その有益な情報を作品に還元していくことが、今回の一番の仕事だと思っています。
とは言え、根本のやりたいこと、やるべきことは石原さん、山田さんが考えられていることと変わらなかったと思います。お二人から2期の大きなテーマが「届け!」だと聞いたとき、それに尽きるなと思ったんですよね。2期前半のみぞれと希美、後半のあすかと久美子、久美子と麻美子のお話もすべて「届け!」、「繋がりたい」、という想いに帰着するので、そこを大切にしなければと思いました。
ただ、それらすべてのエピソードを拾うとなると、映画2本分くらいのボリュームになるんです。

ーー確かに2期はより濃密なドラマが展開されていましたね。

エピソードを絞らないと見せたいものが分散してしまうと思っていました。そんなときに久美子二年生編と、みぞれと希美の新しい企画があると伺って。それならば、今回は久美子とあすかのお話に焦点を当てようと思いました。そこで大きな軸は決まりましたね。

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ーー石原さんと山田さんとは具体的にどのようなお話をされたのでしょうか。

やはりお二人は『ユーフォ』に長く関わってこられた歴史があるので、久美子とあすかを描くにあたって、エピソードの取捨選択だったり、キャラクターの見え方だったりのアドバイスをいただくことが多かったです。
あとは、僕のなかで何か感じてはいても、それが言葉にならなかったり、具象化されなかったりするものがあると、それを山田さんが上手に言葉にしてくださることがありました。
今回、この映画で見せたいことってなんだろうということを考えていたときに、答えは見えているはずなのに、なかなか言葉にすることが難しくてうまくアウトプットできなかったんです。でも、そんなときに山田さんが「あすかのいじらしさ」という表現をされて。
「あ、そういうことだったんだ」とストンと腑に落ちました。確実に感じている何かがやっと形になったと思いましたね。
そこからは、この「あすかのいじらしさ」を、コンテを描く指針にしていきました。

ーー小川さんが考えられる「あすかのいじらしさ」を詳しくお聞かせください。

本当はあまり語りたくないんですけど(笑)。

ーーそこをぜひ伺えればと思います!

あすかの願いってとても単純なんですよね。「演奏をお父さんに聞いてもらいたい」というすごく純粋でシンプルな欲求なんです。でもそれが叶えられないという葛藤。そして利口すぎるがゆえに自分で答えを出し、自分をコントロールできてしまう……。
それでも時々その欲求がこぼれてしまうところこそが「いじらしさ」なのだと思います。
interview03 2期の構成、話の流れは、二つの軸「久美子の想い」・「あすかの想い」のどちらが抜けてもダメで、その二つがクロスしたときに化学反応が起きるんです。

ーーあすかのこぼれた部分に触れてしまうと、あすかのことを知りたいと思ってしまいますよね。久美子もあすかのそういった部分に引っかかっていました。

ただ、それはあすかにとっては「弱さ」で、それ故に誰にも見せないんです。あすかは「語りすぎない」こと、ミステリアスな先輩であることが魅力の一つだと思うので、そこは崩さないようにしていきたいと思っていました。だから、あすか「だけ」のシーンを追加することで、そのこぼれた部分を見せています。
なので、久美子が全てを知ってしまうのは違うと考えています。知らない部分があるからこそ、最後の最後まで溜め込んで、久美子の、久美子なりの、久美子の矜持でシャウトするワケですよ。……いやぁ、良いですね~。(しみじみ)

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ーーTVシリーズを再構築していくうえで難しかったことはありましたか?

1期があっての「2期」を再構成していくということで、キャラクターの紹介をどのように上手く入れ込めるかが難しかったです。1期劇場版では物語そのもののはじまりなので自然に紹介されていましたが、今作ではいきなり饒舌に説明するのも不自然だし、かといって全く説明しないとはじめてご覧になる方にストーリーに入り込んでいただけないので、その良いバランスを探っていきました。

ーーたしかに、久美子とあすか、他の周りのキャラクターの立ち位置に疑問がないようにされていますよね。

多くの方はキャラクターの名前よりも、キャラクターたちがどういった関係性なのかという方を意識されると思うんです。なので、できるだけ説明っぽくならないよう、自然に関係性を見せられるようにコンテを切りました。だから、深く考えようとすれば、予備知識が無いと「あれ?この子の名前なんだっけ?」とか「この子のこと気になる」というようなことはあるとは思うんですが、そこは初見で必要なものではなく、それこそシリーズに興味を持っていただいてはじめて得られる情報でよかったんです。
ちょっとした補完のカットを新しく挟んでいたりもしますので、そういう部分も楽しんでいただければなと思います。

後編へつづく(後日公開)