プログレッシブ!ウインド・オーケストラ 活動レポート

第10回レポート「神奈川公演 総振り返り」

こんにちは!
『響け!ユーフォニアム』公式吹奏楽団「プログレッシブ!ウインド・オーケストラ」のマネージャーの鳥越です!

5月1日にカルッツかわさきにて開催された神奈川公演、いかがでしたか?
無事に、京都からスタートした4公演を終えることができて今はホッとしています。

今回は総括!ということで、神奈川公演を1曲ずつ振り返っていこうと思います。
(ただ、ずっと裏でバタバタしていたので、多分皆さんの方がしっかりと1曲1曲の印象はお持ちだと思います。なので、あくまで“マネージャー視点の補足”としてお楽しみください!)
長くなると思うので、覚悟してくださいね(笑)。

高まる緊張感とともにスタートしたのは「三日月の舞」です。
公演のスタートを告げるファンファーレですが、相変わらず舞台裏で聴いているこちらも緊張します…。
前回のロームシアター京都とは違い、カルッツかわさきでは緞帳が使えないため、曲のスタートと同時に照明がつく、というオープニングの演出でした。
張り詰めた緊張感の中で迎えるトランペット・ソロがしっかりと決まったので、ホッとしました。
この曲はとにかく「緊張→ホッとする」の連続です。
余談ですが、僕はいつも「三日月の舞」の冒頭からソロまでは祈る時間です。ソロが終わったら次の作業を開始しています。

「宝島」「ライディーン」では今回が初となるスーザフォンが登場。
スーザフォンを担当したのはチューバの小峯です。スーザフォンを取り入れてはどうかというのはチューバパートからの発案でした。作中と同様の白い楽器を探しましたが、なかなか無いものですね。楽器の調達のため彼女とは何度も相談を重ねましたが、その甲斐がありました。
彼女の頑張りもあって、この2曲ともノリノリで手拍子と共に楽しんでいただけたと思います。加えて打楽器隊が上手に盛り上げてくれました。

宝島の、誰が聴いてもカッコいいソロ、アルトは外﨑、バリトンはサブインペクの矢澤が吹きました。あのソロ、ほんとずるいですよね。
特にアルトのソロは短いにも関わらず、とても印象的です。サクソフォンの良さが詰まっていると思います。
サクソフォン奏者(大和田先生)が認めるサクソフォン吹き、が集まっているパートをまとめる外﨑の演奏は、この曲以外でも随所で光っていました。
そして舞台裏で心配になるほど、ノリノリで吹きまくっていたホルンパートを率いていたのは直田です。彼女の音はホルンらしい太さと伸びをたくさん持っています。そしてホルンは木管と金管の橋渡しとして、常に気を張っていないといけないパートです。バンド全体のアンサンブルのバランスは、彼女を中心としたホルンパートによって作られていると思います。

2015年の課題曲でもある「プロヴァンスの風」は、課題曲だけあってバンドのレベルが問われます。キメどころを逃さず、そして的確に音を運んでいました。
この曲、僕は木管がキモだと思っています。
特に中間部を支えるピッコロは、担当する幅の“ワザ”が光っていました。最高音なのに支えられている感があるのは彼女の音の持つ力、だと思います。
そして地味に緊張するスネアのリムショットをばっちり決めたのは打楽器でインペクの岡田です。岡田は打楽器隊の中心として、打楽器的にも技巧的な曲の多い「響け!ユーフォニアム」の各曲たちをまとめてくれました。

続けて演奏したのは「ダッタン人の踊り」です。
この曲のコールアングレ(イングリッシュ・ホルン)のメロディはあまりに有名です。
冒頭部分のクラリネットからリレーして奏でられるフルートのメロディは、インペクの高橋が担当。今もインペク業とSNSの更新を中心になってやってくれていますが、初代バンドのインペクでもあったそう。“大人”な音色は、フルートの華やかさと色っぽさを兼ね揃えています。
そういえばリハーサルでは、元はオーケストラの曲であるというのもあり、音作りが課題でした。特に冒頭部分は念入りにバランスのチェックを行っていたのを思い出します。
原曲の雰囲気を吹奏楽の編成へアップデートするリハーサルでした。

なんとなく隠れがちですがハープの大隅の演奏が、とても良い味を出していたと思います。苦手なチューバくんから逃げ隠れする姿からは信じられないほど、ハープに対しての向き合い方は人一倍真剣です。楽器に対しての情熱は「響け!ユーフォニアム」の登場人物と同じ世界観を持っていると思います。

前半の難曲たちの終了とともに訪れる、ほどよい疲労感がこの後に残らないように、楽団はここで一旦休憩に入ります。
ステージから下がってきた皆の顔にはすでに「やり切った感」が見えましたが、まだまだ後半も難所は続くのです。

なので、ステージ上でキャストの皆さんが朗読劇を披露されている間、楽団メンバーは見に・聞きに行きたい気持ちをグッと抑えて体力の回復に努めます。
トイレへ行ったり、水分補給したり、軽食を食べたり、深呼吸したり、目を瞑ったり、談笑したり…、思い思いの方法で、場所で、心を落ち着かせます。

そんな中、劇伴演奏コーナーの出演者はやっと出番です。
たった6人のステージが始まります。
実はグロッケンを演奏した伊藤は楽団内でティンパニも担当しています。
劇伴チームは、楽団とは衣装が違うので、舞台裏で早着替えをしていました。
ティンパニの豪快さと、グロッケンの繊細さ、それだけで大変なのに彼はずっと出ずっぱりだったわけです。その集中力には脱帽です。

そうそう、劇伴チームの衣装に隠された秘密に気がつかれた方はいましたか?
舞台に向かって左手から、ピアノの森岡は黄色。グロッケンの伊藤は水色。1stヴァイオリンの前田は赤(オレンジ系)。2ndヴァイオリンの菅野は紫。ヴィオラの村松はピンク。チェロの森は緑。
さて、何の並びかお分かりでしょうか。
…実は、メインビジュアルのカラーと合わせてもらっていたのです。
ステージ上なのでメインビジュアルほどパステルではなくある程度しっかりとしたカラーを付けてもらってはいましたが、作品に寄り添う劇伴を演奏するチームだからこそ、衣装でも寄り添っていました。

劇伴チームの演奏中に楽団は舞台袖に再集合し、メンバーたちは再度気持ちを高めていきます。

「みぞれと梨々花のオーボエ練習曲」のオーボエ×オーボエのデュオは大久保と小中。劇中と同じく先輩・後輩コンビによる演奏です。
(こっそり心の中で大中小コンビと呼んでいるのはここだけの話です。)
「Songbirds」のオーボエ×フルートのデュオは、安定の大久保と谷髙による演奏、と続きます。

京都公演ではどちらも2人きりの舞台でしたが、神奈川公演では後ろに仲間がいました。
もちろんそれでも緊張すると思いますが、こんなに心強いことはないでしょう。
2曲とも、2人だからこそ奏でられるメロディーです。

オーボエの2人は全然違う音色を持っています。その2人によるアンサンブルは毎度楽しみで、舞台裏でも本番直前まで支え合っている姿が印象的でした。

そして「Songbirds」は、この2人だからこそ作れる音楽ではないでしょうか。
何度も聴いているはずなのに毎回新しい世界を見せてくれます。僕は個人的に、希美とみぞれがウン年後に再会してアンサンブルしている…そんな演奏だと思っています。

2人でも緊張するはずなのに、続く「新世界より」はトランペット独奏です。
あんなにたくさんのお客さんの前でたった1人の演奏。しかもめちゃくちゃ有名なメロディーです。僕だったらとてもできません。
それでも「三日月の舞」に続いてこの大ソロを吹き遂げたトランペット髙木には、今でも大きな拍手を送りたいです。計り知れない緊張との戦いだったと思います。

ソロ・ソリシリーズ(勝手に名付けた)は続きます。
「愛を見つけた場所」は相変わらず泣かせにきます。あれほどまでに切なさと暖かさが同居している曲はないでしょう。2人のデュオから繋がる全員での合奏がとにかく涙を誘います。
ソリスト2人の“やり切った感”がとても印象的でした。
実はこの曲だけコアメンバーによるソロではありません。務めたのは、トランペット磯野、ユーフォニアム作山です。

続く「響け!ユーフォニアム」…きました。
作品の名前を冠するこの曲は、既にファンも多くいる(?)というサブインペクの石倉がソロを担当。
とにかく見事な演奏でした。
緊張と戦う舞台裏、そしてステージへ出ていく姿、それだけで僕は感動だったのですが、それに加えてあの見事な堂々たる演奏と、そのあと舞台袖に戻ってくる時の格好良さったらないと思います。

京都公演ではコンクール風の演出でしたが、神奈川公演では黒沢ともよさんの生台詞で次の曲へ。
これがもう…!直前リハのマイクチェックの時、思わず涙してしまいました。
公演随一のグッとくるポイントだったと思います。

そしてはじまる「マーチ・スカイブルー・ドリーム」は地味(失礼)ながら、 その分アラが目立ちやすい曲。これも実際のコンクールの課題曲なので当然といえば当然でしょう。
これが上手くいくかいかないかで続く「リズと青い鳥」への期待値が変わる、そんな緊張感がバンド内に漂います。

実際のコンクールと同じく拍手なしで迎えた「リズと青い鳥」の第3楽章の大久保のオーボエ・ソロはもちろん、続く谷髙のフルート・ソロはとても有名ですが、実はバスクラとファゴットの支えがすごく重要なんです。
そんな見事な支えを魅せてくれたのは、ファゴットの平川とバスクラの上條です。大きなソロやとても目立つパートなわけではないのですが、ぜひ注目して一度聴いてみてください。このパートの演奏こそが曲の良し悪しを左右していると言っても過言ではないと思っています。

3rdクラリネットを率いていた笠も忘れてはいけません。
彼女は第5回定期演奏会のコンミス。コンミス・レベルがこのパートにいるという安心感は凄いと思います。そしてさらに層の厚さを物語っていると思います。
この3パートは全体を通して木管の要を担う大事なパートです。

この平川、上條、笠、そして髙木、直田、石倉は現役学生にしてこのバンドのコアメンバーです。将来有望の6名、今後も要チェックです。

木管の要が上の3人ならば、金管、そして全体の支えはバス・トロンボーンの森を中心にしていると言っても過言ではありません。
トロンボーン自体が、そもそもハーモニーに重きをおいたパートなので、それを支えているバス・トロンボーンひとつでバンド全体の安心感が変わってきます。
音楽は低音から作られます。ベースは“ベース(礎)”なのです。チューバもコントラバスも低音パートですが、他のパートとの“つなぎ”としての役割を持つバス・トロンボーンの立ち位置はとても大切なのです。

プログラム本編はここで終了ですが、まだまだアンコールが続きます。
ずっと終わらなければいいのにとさえ思いますが、そろそろ演奏者たちも体力も限界です。

アンコールの1曲目。
昼公演でのみ披露されたのは「アルヴァマー序曲」。
今回の演奏、僕はこっそり“プログレッシブ・爆速バージョン”と呼んでいます。
吹奏楽オリジナル曲なので演奏された方も多いと思いますが、あのスピードで演奏できるというのはこのバンドだからこそではないでしょうか。
爆速なのに転ばない、そして決して“走って”いるわけではない、そんな速さで駆け抜ける疾走感がたまらなくカッコいい一曲になっていました。
ちなみにこの速さは、リハの初日からです。

夜公演で演奏されたのは「これが私の生きる道」です。
個人的に「響け!ユーフォニアム」という作品に関わり始めたきっかけである「誓いのフィナーレ」のスタートを飾るこの曲がとても好きで、聴くといつも新鮮な気持ちになります。
超真面目な性格のトロンボーンの加藤のソロは、これまでのプログラムの疲れを感じさせない艶やかさでした。特に今回のソロは、今までにないはじけた演奏で、彼の新たな一面を垣間見た気がします。

昼夜共にラストを飾った「Samba de Loves You」では、再びスーザフォンが登場。
トランペットで金管インペクの國米の華やかなソロとともに会場を盛り上げてくれました。
彼の音楽に対する勤勉さは誰もが応援したくなると思います。クラシックもポップスもいけるのは彼の強みでしょう。これだけ演奏力のあるメンバーがいると金管セクションはエンジンをかけやすいと思います。

この曲、そして宝島、ライディーン、これが私の〜、でドラムを担当したのは大西です。
彼の安定感と程よいオカズ感、そしてテクニックがあるからこそ、ポップス曲が締まります。もっと活躍する曲がプログラムにあればいいのに…!と思ってしまうほどです。

こうして無事に終幕を迎えた神奈川の2公演。

京都公演から続いてこのバンドを引っ張ってくれたのは、ダブルコンマスとしてバンドをまとめてくれたクラリネットの山形と二瀬でした。
初代、2代目のコンマスが引っ張っていってくれているからこそ、バンドにまとまりが出ているのだと思います。
それぞれの良さを持ってバンドを引っ張れる選択肢があるというのは、豪華さはもちろん、バンドの幅の広さを物語っています。日々、音楽がガラッと変わるパワーやエネルギーは彼女たちから生まれてくるのでしょう。

今回、曲ごとの振り返りと共に、コアメンバーを中心に名前を挙げましたが、列挙した内容以外にも楽団のメンバーはたくさんの仕事、役割をこなしてくれていました。
もっと複雑な関係性がありますし、ここに書いたのは全体の中でほんの一部分だけです。
きっとあの日聴いていた皆さんからすると「あの人はもっとあそこが輝いていた!」というところがあると思います。
そのご指摘、むしろあって欲しいなと思います。
その時点で“推し”になっているはずです。

バンド全体としては、京都公演では「緊張」との戦いでした。
でも神奈川公演は「自由」との戦いだったと思います。
京都公演で自分達がどこまでやれるかわかったからこそ、神奈川公演では更に上の自由さを求めていくのです。殻を破るためには必要なことでした。
でも、それが上手くいったからこそ、あの空間を精一杯楽しむことができたんだと思います。
それは終演後にTwitterに呟いていた出演者たちの言葉が物語っていました。

自分達が楽しめるからこそ、お客さんはより一層楽しむことができる、これこそが「演奏会」だと思います。
月並みですが、演奏会って本当に素晴らしい空間だと改めて思いました。

(恒例の集合写真。素晴らしい空間を彩った出演者一同です。)

さて、初めてのバンドで迎えた第6回目の定期演奏会。
ファンの皆さんに受け入れてもらえるかどうか、ずっと緊張しっぱなしでしたが、やっと少しだけ肩の荷が降りた気分です。
今回の4公演で、音楽を楽しみつつもバンドとして進化していく、その名に恥じない姿を披露できたのではないかと思います。

そうです。一歩でも先に行く、進化し続ける音楽。
それが「プログレッシブ!ウインド・オーケストラ」です。
次にお会いするその日には、更に磨かれた姿をお届けできることだと思います。

それでは、次にお会いする日をお楽しみに!
ご来場いただいた皆様、支えてくださったスタッフの皆様、共演したキャストの皆様、そして全ての「響け!ユーフォニアム」ファンの皆様、ありがとうございました!

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プログレッシブ!ウインド・オーケストラ Profile

演奏面の進化とこれからの更なる成長のために、「“かつてフレッシュに演奏をしていた楽団のメンバー”を対象としたオーディション」によって誕生した楽団である。 2014年から続く数々のイベントやコンサート、そしてレコーディングに参加した出演者の中から選りすぐりのメンバーが集結した。

「作品への愛」を持って奏でられる音はこれまでと変わらず、個々が培ってきた経験を活かした演奏力はそれぞれにレベルアップし、更にこれらがメンバー間で相乗効果を産むことで、良い化学反応が起こることが期待されている。 「プログレッシブ」とは“進歩的なさま”“革新的なさま”という意味をもち、クオリティの高い、更に先に一歩進んだパフォーマンスをお届けする。